まえがき

 はじめまして、一級建築士で建築音響アドバイザーの遠藤真です。私は神戸市で、遠藤真・安田倫子設計室という設計事務所を営んでいます。
 私の設計室は、元々は一戸建て住宅を専門に手がける設計事務所でした。それが今のように音楽のための防音室を多く手がけるようになったきっかけは、あるアマチュア音楽愛好家の住宅を設計したことです。
 その時にクライアントさんは、家の一室を、夜でもご近所の迷惑にならずに自由に楽器を奏でることができる部屋にしたいとご希望になり、その時に、知り合いのピアノ調律師であり、個人で手作り的に防音工事も手がけている一人の人を紹介してくれました。それが私の現在の音楽室作りのパートナーであるM氏です。
 そしてその家づくりにおいて、私が全体的な建築設計を手がけ、音楽室の防音工事をM氏が担当し、そして音楽愛好家のクライアントさんも加えて、三者で打ち合わせを重ねて、防音室付きの住宅をつくっていきました。
 元々、私自身が楽器を演奏することを趣味とする音楽愛好家でもありますので、この家づくりの仕事はたいへん楽しいものでした。そしてまた、住宅における防音室づくりの知識も、この時に身に付けることができました。

 

 その家が完成して、それを私の設計室のホームページに掲載しましたことろ、それをご覧になった方から、防音室の設計と工事の依頼が来るようになりました。それは新築住宅の場合であったり、既存の住宅の一室を防音室に作り替えることであったりしましたが、そんな中に、すでにできている防音室を改善したいというご相談も、いくつかありました。
 つまり建築業者に頼んで防音室を作ってもらったのだが、音の点でいろいろ不満があるので、なんとかならないだろうかという相談です。
 そのような相談に対応した中でわかってきたのは、世の中には、防音室を作ったのに、いろいろ不満を感じておられるかたが、かなり多いということでした。遮音性能が悪く、近隣の住戸にピアノなどの音がつつぬけで少しも防音の役目を果たしていなかったり、あるいはその部屋の中で楽器を弾くと、スカスカの音であったり、あるいは逆にキンキンした音だったりして、聴くに耐えない状態であるなど。
 せっかく防音室を作ったのに、不満足な結果になっていて、がっかりしている方がたくさんおられることがわかってきました。

 

 なぜそのようなことになったのか。それを確かめるために、その防音室?を実際に拝見したり、図面を見せていただいたりして考えたところ、いろいろなことがわかってきました。
それは一言でいうと、世の中で作れている「防音室」には、良い防音室とダメな防音室があるということです。そして不満を感じておられるのは、当然のことながらダメな防音室をつかまされてしまった方です。
 では、どのような防音室が良い防音室で、どのような防音室がダメな防音室なのか。そして、どうしてダメな防音室ができてしまうのか。良い防音室を実現するためには、どうすればよいのか・・・・・

 

 近隣に気兼ねなく、いつでも楽器の練習ができたり、オーディオ装置による音楽鑑賞ができる、防音室がある住まいをつくることは、プロ、アマを問わず、音楽を愛する方の夢だと思います。
 この本では、そのための良い防音室を作るための基礎知識を、一般の方にもご理解いただけるように、できるだけわかりやすく書いています。ご一読いただき、失敗のない防音室づくりにお役立ていただき、より豊かな音楽生活の一助にしていただければ幸いです。