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気持ちの良い高品位な音のためには天井の高さが大切

 


 

前回、室内音響のことについて書きまにたが、室内の音響には、3つの主要な要素があると考えています。一つは音色。柔らかい音とかクリアーな音とか、あるいはキンキンした耳障りな音とか、カスカスの潤いのないとか。この音色は、室内の壁、天井、床などの材料によって規定されます。

もう一つは、残響。残響が多いと豊かな響きをもたらすのですが、多すぎると音がにごり、かえってきたなくなります。この残響は、部屋の大きさ(空間容積)によって規定されます。

以上の2つは、ある程度、音のことについて知識のある人は留意する点で、音楽室を作るにあたって、音楽家の方でも、こんな音色にしてほしいとか、残響は長目にしてほしいとか、短いのが好きとか、ご注文をつけられることが多いです。

でも私は、これまでいろいろ音楽室を作った経験から、もうひとつ大切な要素があると思っています。それは音の伸びやかさです。

これは音楽家の方でも、あまりおっしゃらないようですし、まして一般の防音工事屋さんは全く念頭にないようです。しかしこの「伸びやかさ」というのは、気持ち良く演奏するために、きわめて大切な要素であると私は考えています。また、音色の良さも残響の豊かさも、そこに伸びやかさが加わることによって、ぐっと高品位な気持ちの良い音になってきます。

その伸びやかさは何によって規定されるかというと、それは部屋の「対面距離の最小値」であると私は考えています。対面距離というのは、上図のW、Н、Dで示した寸法のことで、相い対する壁と壁、または天井と床の距離のことなのですが、その最小値が伸びやかさを規定しているということです。

ですから、上図の場合はW、D、Hのうち、Hが一番小さいので、その寸法で伸びやかさが決まります。特殊な場合を除いてたいていの場合、W、D、Hの内でHが一番小さくなるのが普通なので、天井の高さが音の伸びやかさを決める指標だと言ってもよいと思います。多くの方は音楽室を作るときに床面積をどれくらいにするか(何畳くらいの広さか)ということばかりに気を取られて、天井高のことはあまり気にされない方が多いのですが、いくら平面的に広くても、天井が低ければ気持ちの良い音にはなりません。

さて、それではどれくらいの天井高(H)があればよいのでしょうか。先程言いましたように、音の伸びやかさは、W、D、Hの内の最小値で決まるので、WとD とが決まっているのなら、Hをそれ以上にしても、あまり意味はありません。例えば6帖の大きさの部屋で、W=2.7m.D=3.6mだとすると、Hを2.7m以上にしても、音の伸びやかさのためには一あまり意味がないということいなります。(ただ全体の空間容積は増えますから、それだけ長い残響にすることができ、響きが豊かになるというメリットはありますが)

これまでの私の経験では、天井高は少なくとも2.4mは確保すべきと考えています。こう言うと、なーんだ、2.4mなら普通の部屋と変わらないじゃないか、と思われた方がおられるかもしれません。その通りです。普通の天井高なんです。ところが住宅につくられ音楽室(防音室)の天井は、それより低いものがたいへん多いのです。

初めて音楽室をつくろうとする人は、音楽室の天井は当然、他の一般室の天井より高いものになると思っておられるかもしれませんが、実は多くの場合、そうではありません。

たとえばヤマハのアビテックス・フリータイプの天井高は次の3種類の中から選べるようになっています。

低壁タイプ 2104ミリ、標準タイプ 2191ミリ、高壁タイプ 2383ミリ

一番高いタイプでも2400ミリないのです。

(ユニット式の定型タイプのものだと、高いタイプでも2163ミリしかなく、標準タイプだと、なんと1963ミリしかありません。)

ですから私は少なくとも一般の部屋と同じ2400ミリくらいは確保してほしいと言うのです。(もちろんそれは最低基準です。これを超えて2500ミリ、2600ミリ、2700ミリと高くなるにしたがって、確実に音の伸びが良くなっていきます。)

ところが、このように大手の作るフリータイプ(しかもこれが驚くほど高額)でも、2400ミリに満たない天井であることの理由は、一般的な構造の建物は、木造一戸建て住宅であれ、鉄筋コンクリート造のマンションであれ、防音室の設置など想定して構造体の設計をしていませんから、そこに遮音のために二重床、二重天井を施工しようとすると、どうしても天井が低くなってしまうのです。

そうならないようにするためには、建物の基本設計段階から音楽室をどこに配置するかということを想定して建物の構造設計を行っておかなければなりません。

防音室を作って二重天井、二重床にしても、きちんと2400ミリ以上の天井高が確保できるように、その部分の梁、桁、大引などといった構造体の位置や高さを設計しておかなければならないのです。

このように言うと、なにか難しいことのように聞こえますが、建物の構造にことに通じており、しかも防音室の仕様について知識のある建築士にとっては、それほど難しいことでありません。またそうすることによって工事費が特段上がるわけでもありません。

しかし建築構造や建築施工についての知識が乏しい防音工事屋さんにとっては、けっこう難しいことですし、また建築士であっても防音室についての知識や工事経験がなければ、基本設計段階での構造的配慮の必要性に気付かなかったり、不適切な設計をしてしまったりしてしまいます。

(一般の方は、建築士であればそれくらいのことはわかっているだろうと思っておられるようですが、試しに設計事務所をやっている建築士5人に防音室のある家の基本設計をさせてみてください。5人のうち4人が、何の配慮も工夫もない図面を作ってきますから。)

そんな設計で進んでしまうと、確認申請が下りて、工事が進行して、いざ防音室を作ろうとしたら天井高が低くしかとれないということがわかって、しかし今更もうどうしようもない、などということになるのです。

ですから防音室のある家をつくるなら最初の基本設計段階から、きちんと配慮をした設計をしておくことが大切です。

まあいろいろ述べましたが、天井高というのは、良い音のための大切な要素です。また天井高を高くすることは、平面的な広さ(図のW,D)を広くすることとは違い、場所を取るわけではありませんから少しの知識と工夫があれば可能であり、それに伴う費用もたいしてかかりません。それでいて気持ちの良い高品位な音響を得ることができるのですから、音楽室(防音室)を作るなら基本設計段階からきちんと配慮をして、十分な天井高を確保することをしなければ損です。

ぜひとも実行していただきたいと思います。