home page

sitemap

*

office

gallery

profile

article

fee

music room

fellow

favorite

*

*

link

blog

E-mail

 

上の画像をクリックしますと、遠藤真・安田倫子設計室のホームページ が開きます

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「音」を設計する

(ピアノ室・音楽練習室をつくるための基礎知識)

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

最近は、住まいにAVルームを作る方や、ピアノ室などの楽器練習室を設けたりする方、また近隣からの騒音や交通騒音などを気にせずに暮らしたいという目的で、家全体の遮音性能を良くするなど、音のことを重視する方が増えてきました。

そのような皆様の参考にしていただくために、建築音響設計の基本的な要点を説明したいと思います。


ポイント1:遮音と吸音を混同しない


まず基本は、遮音と吸音を混同せず、しっかり区別して認識しておくことです。

私が大学で建築を勉強しているとき、建築音響学の前川純一先生が、遮音と吸音を混同した例として、ある小学校の防音工事の例を教えてくれました。その小学校は、今ではもうあまり見られない木造校舎だったのですが、校庭からの音が、教室に入ってくるのを防ぐため、壁内に吸音材を入れたのです。その結果はほとんど効果なしでした。

昔はこういう間違いをよくやっていたようです。遮音のために吸音材がほとんど役に立たないことは、音響設計の専門家の間では周知の事実ですが、一般の方はご存知ない方が多いようです。それだけでなく、実は建築士でも、そのことをよくわかっていない“音痴”の人が、けっこういるのです。そういうわけで、まず遮音と吸音について、まとめておきたいと思います。


遮音

室内へ、外部や他の部屋から音が進入したり、また逆に音が漏れたりするのを防ぐこと。

遮音のためには重い材料を使うこと多層にすること隙間をなくすことの3つが原則です。

重いということでは建築材料としては、密実に施工されたコンクリートが遮音特性が優れていますが(注1)、木造の場合は外壁はモルタル塗り、内壁は石膏ボードが効果があります。(もちろん厚ければ厚いほど良い。)薄くて軽いサイディングやベニヤ板は、遮音効果はあまり期待できません。

多層というのは、遮音性のある材料を2枚以上使って壁を作ることをいいます。貼り合わせても、もちろん重量が増えるのに見合った効果はありますが、間に空気層を作るように離して配置すると、遮音性能はずっと大きくなります。

また隙間について言えば、ちょっとの隙間でも音は漏れるので、コーキング材などで入念にふさぐ必要があります。また窓についていえば、ガラスは厚い方が遮音性能は優れていますが、同時にアルミサッシュ自体の防音性能も大きく影響します。一般の住宅用アルミサッシュは遮音の点は十分とは言えないので、防音サッシュを使うのが効果的です。

(注1)ただしコンクリートと名がつくものでも、軽量気泡コンクリート(ALC版、商品名ヘーベルやシポレックスなど)や、コンクリートブロックは、内部に空隙を多く含み、遮音効果は劣ります。


吸音

室内の音を吸収すること。

音楽ルーム内で発生した音(つまり楽器やオーディオの音)が聴きよい音になるように、吸音材によって調整します。吸音は内部に空気的空隙を多く含んだものほど効果が大きく、スピーカーボックス内部に貼られたグラスウールなどはその代表的なものです。その他、ロックウール吸音板、厚手のカーペットやカーテンなども吸音効果があります。


遮音と吸音の組み合わせ

以上のように、遮音と吸音は、その目的が異なります。遮音は、対象となる部屋の外と内の関係を調節することであるのに対し、吸音は、その部屋の内部における音の調整です。(冒頭に書きました小学校の例は、遮音をしようとして、まちがって吸音をしてしまっているのです。)

したがって建築的に、遮音と吸音を一つの材料や工法で行うことはできません。一般に遮音材は吸音には無力であり、吸音材は遮音には役に立ちません。

ところが音楽ルームは遮音と吸音を同時に要求されるので、そこに設計や施工のポイントがあります。原則としては、室内仕上げ材は吸音性のあるものとし、その下地材や外壁材は遮音性のあるものを使います。その両者をうまく組み合わせて、良好な音環境になるように調整していきます。

 


ポイント2:平行反射面、凹曲面を避ける


ここで反射と言う言葉が出てきましたが、音の反射とは、吸音の逆です。つまり吸音率70%なら、反射率は30%ということになります。一般的に、コンクリート、ガラス、合板やボード類などは反射性が高く、カーペット、カーテンなどは吸音性が高い材料です。

さて天井と床や、右の壁と左の壁などは、たいてい平行にできていますが、これらが反射性の高い材料でできていると、音がエコーの状態になって干渉しあい、特定の周波数で定在波が発生します。特に低音域で発生した定在波は、ブーミングといって、とても聴きづらいものです。また天井がドーム型の凹曲面であったり、壁が凹曲面のカーブを描いていたりすると音の焦点ができて、位置によって音圧に強弱ができます。(よく天井がドーム型をしていると、よく響いて、いい音がするのではないかと思っている人がいますが、それは誤りです。)これらは、いづれもすこし音楽に親しんでいる人には、すぐわかる場合が多いのですが、聴感上はすぐに認識できない場合でも、長時間そういう状況にいると、聞き疲れしやすく不快感を生じてきます。

ですから室形状として理想的なのは、天井と床、左右の壁、前後の壁が平行でなく、かつ凸面をしていることです。(凸面は音を拡散させるので、音分布が均一になります。)コンサートホールや音楽スタジオは大抵こういう形になっています。ただし、古いコンサートホール(ウイーンのムジークフェラインや、ボストンのシンフォニーホール)などは、シューボックス型といって、全体として直方体の形をしているものも多く見受けられます。これらの場合は、ホール内の桟敷席や多数の彫刻、装飾物などが音を拡散させ均一化させる働きをしています。

住宅の音楽ルームは、通常は壁を傾けることなどが困難なことが多いですが、そのような場合は平行面の内、少なくとも一方は吸音性を十分に高くします。つまり正面の壁と後方の壁のどちらかとか、天井と床のどちらかに吸音性を高い材料を使うわけです。ただしオーディオルームなどでは、左右の壁は同条件にすべきなので、いずれもある程度の吸音性をもたせることになります。

(天井や壁に、桟(さん)やルーバー状のものを取り付けて、音を拡散させる方法もありますが、細い桟や小さいルーバーでは、高音域には効果があっても、低音域ではあまり効果がありません)

 


ポイント3:低音域のコントロールが重要


音のコントロールは、一般的に高音域よりも低音域の方が、ずっとむずかしいのです。

その理由は、高音と低音は、耳で聴いて同じくらいの大きさの音でも、実際の音のエネルギーは、低音の方がずっと大きいからです。そのため、低音は空気だけでなく、壁や天井といった物体までも振動させることが多く、その振動が他に伝わってしまうので、それを抑制しなければならないからです。

また低音は高音よりも波長が長いということも、音処理が難しい理由です。たとえば2000Hzの高音の波長は17センチほどですが、200HZの低音の波長は、その10倍の1.7メートルもあります。波長が長いと、小さな凹凸では音が拡散してくれません。ポイント2で書きましたように、細い桟や小さいルーバーでは低音域ではあまり効果がないのは、このためです。

したがって、低音域をいかにコントロールするかということが、遮音上も吸音上も、重要になってきます。

 


ポイント4:楽器演奏室とオーディオ・リスニングルームは違う


一言で音楽ルームといっても、そこで楽器を演奏するのか、CDなどをオーディオ装置で聴くのかによって、設計の考え方が変わってきます。


楽器演奏室

楽器演奏のための部屋は、できるだけ大きな室容積を確保し、適度な残響があるようにするのが原則です。

よくコンサートホールなどでは残響時間2秒を基準にしますが、それは大空間でのことで、学校の教室や住宅の音楽室などでは2秒も残響があると、かえって聴きづらくなります。でも楽器の音に潤いをもたせるために、適度な残響は不可欠です。

また部屋も大きいほど、音の抜けがよくなって、聴き疲れしません。


オーディオ・リスニングルーム

楽器演奏室に対して、オーディオ・リスニングルームは、広さはそれほどでなくてもかまいませんから、十分に吸音をすべきです。

CDの音には当然演奏会場での残響が録音されています。それを忠実に再現することが目的なので、部屋の反響音があると、余計なものが付け加わってしまうことになるのです。

よく、オーディオ装置をグレードアップしても思ったほどよい音にならなかったという話を聞きますが、それは部屋の反響音が大きく、オーディオ機器の音より部屋の音を聴いてしまっているからです。(特に合板類は、中高域のキンキンした音を反射しやすいので、耳障りに感じます。)十分に吸音された部屋で聴きますと、オーディオ機器による音の違いがよくわかるだけでなく、高価な装置でなくても、けっこうよい音であるのに驚かされます。

これは私の体験なのですが、大学生の時、自室の安物ステレオの音に飽きたらず、ふと思いついて、板敷きの床全体に厚手の布団を敷き詰めてみたのです。そうするとびっくりするほど音がよくなりました。まず中高音のキンキンが消えて、伸びと抜けのよい音になりました。音自体は、一見おとなしくなります。しかしそれが、オーディオ機器本来の音により近い音なのです。またボリュームも少し上げてやらなければなりませんが、それはとりもなおさず、そのボリュームの分だけ、部屋の反射音を聴いていたことを意味します。音楽ホールの美しい残響音を聴いていたつもりが、実は部屋のベニヤ板の反響を聴いていたのかも知れないのです。

住宅の部屋の場合、全周波数帯域における十分な吸音というのは難しく、ある程度の反射音が残るのはやむをえませんが、内装材の選定やファブリックス、家具などで、余計な反射音を押さえるようにすると、よい音で聴けるようになります。

また小さい部屋などでは、スピーカーを左右のコーナーに置いているのを時折見かけますが、音はコーナー的なところに集まっていく傾向があり、そこに音源があると、特に低音域がハウリング的に干渉し、聴くに耐えなくなります。スピーカーはコーナーを避けて、少し中央よりに配置してください。またスピーカーに近いコーナー部分は特に念入りに吸音することが望ましいです。

 


音響随想
音についての身近なエピソードを取り上げて、気ままに書いています。


意外と良いカーオーディオの音

私がCDを聴くことが一番多いのは、実は車の中なのです。毎日の職場への行き帰りや、お客さんのところや現場への往復などには、必ずといっていいほどカーオーディオでCDを聴いています。特別の装置を積んでいるわけではなく、はじめから付いていた装置をそのまま使っているだけですが、これが結構いい音がします。以前に乗っていた車も普通の乗用車だったのですが、カーステレオは結構聴けました。住宅の部屋に比べると、車の室内はきわめて狭いにもかかわらず、このようにカーオーディオの音が、装置の割にはそこそこ聞けるのは、何と言ってもその室内の造りにあります。

まず遮音性が良いことがあげられます。ドアやガラスの建て付けがきっちりしていて、閉めたときに隙間がほとんどありません。これに比べると、住宅の建具など、アルミサッシュでも隙間だらけといえます。(防音サッシュは別ですが。)ガラスの厚さなどは、ほとんど同じですが、隙間がない分、遮音性がぐっと高くなっています。

それに車体はタイヤで地面から浮いています。そのタイヤは振動を吸収するゴムと空気でできていますから、ほとんど完全な浮き床構造になっているわけです。そのため地面を伝わってくる振動などもほぼ完全に遮断されます。

次に室内の形状ですが、向かい合った平行面というものが、全くといっていいほどありません。ですからエコーなどが発生せず、音が室内全体によく拡散し、均一な音場を作ります。

そしてもう一つは内装材料です。車内は安全のために、ガラス窓以外は天井も床も、座席も、ほとんどの部分が柔らかい布張りなど、吸音性の高い材料で作られています。ですから不要な反射音が、きわめてよく抑えられています。唯一の反射面は窓ガラスですが、ガラスという材料は密度が高いため、高音域から低音域まで比較的均一な反射率を持っており、反射音に妙な癖が出ません。

そういうわけで、車内というのは、広さの点を除けば、きわめて良好なオーディオ・リスニング空間なのです。ですから、車内と同じような造りで、もっと室容積のある空間を造れば、理想的なリスニングルームになるはずです。

 


落ち着けないレストラン

私の設計事務所の近くに、半年ほど前、11階建てのシティホテルが完成しました。大理石を使ったゴージャスなロビーの奥にレストランがあります。これもインテリアデザイン的には、なかなかおしゃれなものだと思います。

でもこのレストラン、私はオープン直後に2〜3回行ったきりで、その後あまり行く気になれません。なぜならここで食事をしたりお茶を飲んだりしていても全然落ち着けないからです。その理由は明らかです。あまりにも騒音が耳につくのです。

なぜそうなのかは、内装を見渡してみればすぐにわかります。床は木製のフローリング。壁はセメント系のパネルが主体で、一面全体にガラスのミラーが貼ってあります。天井は硬質のボードで、一部はコンクリート直仕上げです。つまり反射性の材料ばかりで構成されており、吸音性の材料はほとんど使われていません。ですからナイフやフォークのカチャカチャいう音が妙によく響きます。また他の客の話し声も、少し離れていても、けっこうよく聞こえてきます。厨房での皿を洗う音までが漏れてきます。つまり全体が何か騒々しいのです。このような中では連れのものと会話をするにも少し大きめの声で話さなければなりません。皆が皆そうするものだから、よけいに騒がしい感じになります。

このレストランを設計したインテリアデザイナーは、たしかに視覚面でのデザインセンスはあるのかも知れません。しかし音のセンスは皆無・・・、というよりも全く注意が払われてないのです。このようなことが、残念ながら我が国では、いたるところでまかり通っています。このレストランの場合、たとえば天井をロックウール吸音板にするなどの、ちょっとした音響上の知識と配慮があれば、ずいぶんと良くなったはずなのです。

皆さんも、このようなご経験はないでしょうか。今度レストランや喫茶店へ行かれたら、その室内の音の具合と内装材料に注意してみてください。