”画一的で高額!” 防音室づくりの旧弊から脱却しよう
防音室をつくることには、様々な固有の条件があります。
それは、奏でる楽器、音楽の種類、使用目的、建物本体の構造、周辺状況、デザインの好み、などです。
ところが、世間で作られている防音室を見ると、それらを十分に検討することなく、画一的な仕様で高額の防音室が多く作られているように思います。
例えば自動車などは、いろいろなメーカーが、大きさもデザインも性能も独自性があり、そして価格面においても幅広い選択肢を持ったものが作られているのに、どうして防音室は画一的なのでしょう。
それは防音室づくりを業としている者の多くが、単なる防音技術者に停まってしまっており、音楽を知っておらず理解もしておらず(モーツァルトとショパンの区別すらつかない)、楽器のことを判っておらず(同じグランドピアノでも、それぞれの楽器の個性を知らない)、デザインセンスも無く(基本的なカラーコーディネートの知識も無い)、建築の知識も持っていない(木造在来工法とツーバイフォー工法の違いも知らない)からです。
そのような旧態依然たる状態から脱して、音楽家や音楽愛好家の方々に本当に役に立っていくためには、防音室づくりにたずさわる者が、単に防音の知識だけでなく、音楽についての感受性、楽器についての知識、建築の設計・施工についての知識、そしてデザインのセンス、それらをしっかりと身につけていく努力をすること(一人でだめなら、チームを組んで)が大切です。
そしてそのベースになるのは、なによりも音楽と建築を愛する気持ちではないでしょうか。
(ちなみに、ドイツのフリードリッヒ・シュレーゲルは「建築は凍れる音楽だ」と言っています。「凍れる」とは「美しく結晶化する」という意味です。)
音楽家や音楽愛好家が、その防音室に求める固有の条件を十分に理解して、それにかなった設計をするように努力すること。そうすれば、そのプロセスにおいて、何が大切なことなのか、何が不必要で効果の薄いことなのかということも、おのずと明らかになっていきます。その結果として、予算を無駄なく使っていくことができ、全体としてのコストを抑えることにもつながっていくと思います。