音響随想(1)・・・意外と良いカーオーディオの音
私がCDを聴くことが一番多いのは、実は車の中なのです。毎日の職場への行き帰りや、お客さんのところや現場への往復などには、必ずといっていいほどカーオーディオでCDを聴いています。特別の装置を積んでいるわけではなく、はじめから付いていた装置をそのまま使っているだけですが、これが結構いい音がします。以前に乗っていた車も普通の乗用車だったのですが、カーステレオは結構聴けました。住宅の部屋に比べると、車の室内はきわめて狭いにもかかわらず、このようにカーオーディオの音が、装置の割にはそこそこ聞けるのは、何と言ってもその室内の造りにあります。
まず遮音性が良いことがあげられます。ドアやガラスの建て付けがきっちりしていて、閉めたときに隙間がほとんどありません。これに比べると、住宅の建具など、アルミサッシュでも隙間だらけといえます。(防音サッシュは別ですが。)ガラスの厚さなどは、ほとんど同じですが、隙間がない分、遮音性がぐっと高くなっています。
それに車体はタイヤで地面から浮いています。そのタイヤは振動を吸収するゴムと空気でできていますから、ほとんど完全な浮き床構造になっているわけです。そのため地面を伝わってくる振動などもほぼ完全に遮断されます。
次に室内の形状ですが、向かい合った平行面というものが、全くといっていいほどありません。ですからエコーなどが発生せず、音が室内全体によく拡散し、均一な音場を作ります。
そしてもう一つは内装材料です。車内は安全のために、ガラス窓以外は天井も床も、座席も、ほとんどの部分が柔らかい布張りなど、吸音性の高い材料で作られています。ですから不要な反射音が、きわめてよく抑えられています。唯一の反射面は窓ガラスですが、ガラスという材料は密度が高いため、高音域から低音域まで比較的均一な反射率を持っており、反射音に妙な癖が出ません。
そういうわけで、車内というのは、広さの点を除けば、きわめて良好なオーディオ・リスニング空間なのです。ですから、車内と同じような造りで、もっと室容積のある空間を造れば、理想的なリスニングルームになるはずです。